研究領域 | 配列ナノ空間を利用した新物質科学:ユビキタス元素戦略 |
研究課題/領域番号 |
19051001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷垣 勝己 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (60305612)
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研究分担者 |
豊田 直樹 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50124607)
松井 広志 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30275292)
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キーワード | ナノ物質 / クラスレート / ボロンクラスタ / 磁性 / 超伝導 / アルミノケイ酸クラスタ / 構造 / フォノン |
研究概要 |
本特定領域研究では、配列ナノ空間を有する物質群の伝導・磁気物性を研究している。H22年度では、クラスレート構造を有する内包空間に閉じ込められた原子の非調和運動が創出するラットリングフォノンが、伝導電子とどのような相互作用をするかに関して、単結晶育成法を用いてキャリヤ濃度を幅広く変化させた試料を対象として詳細に研究した。本研究では、キャリヤに依存する物性とフォノンに依存する物性を独立に評価する研究手法を適用して解析した。その結果、電子に依存する電子比熱項であるゾンマーフェルトγ項と非調和振動ポテンシャル間のトンネリング運動に起因するα項を分離して評価することに成功した。実験の結果として、非講和フォノンが存在する場合、電子-フォノン相互作用の大きさは、2倍程度増強される可能性がある事が示された。またこの結果は、精密な単結晶構造解析の結果と比較して検討する事により、内包原子の電価分布の広がりに基づいて決定される静電ポテンシャル局面の大きさと良い一致が得られる事を示した。また、pとnのキャリヤを変化させたBa_8Ga_<16>Ge_<30>の試料においては、p型物質の籠骨格における欠陥が物性に大きな影響を及ぼす可能性を磁化率の測定から示す事ができた。一方電子状態に関しては、グラフェンなどにみられる特異な電子状態であるディラックコーン電子状態に関して研究を進めた結果、鉄砒素2次元構造を有する物質Ba(FeAs)_2において同様の質量零のディラックコーン状態が観測され、その電子状態が磁場に対する線形な磁気抵抗として観測される事を見出した。以上記載したような特異な非調和フォノンならびにディラック電子状態は、新しい物性研究として発展すると考えられる。東日本大震災の影響で、業者の配達が間に合わず15,020円の繰越を行ったが、研究は予定通り完結する事ができた。
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