研究概要 |
本特定領域研究の目的は、配列ナノ空間を有する物質を対象とする事により、新しい物質科学を探究するものである。そのために、物性研究として意味のある物質を微細構造の観点から高精度に制御して、その基礎物性理解を深める事が必要である。本特定領域研究における本研究計画班の役割は、配列ナノ空間物質として重要な位置づけにある幾何多面体物質の伝導ならびに磁性を対象として物性研究を遂行する事により、種々の配列ナノ空間の物性研究を発展させる事である。IV族元素(C,Si,Ge)を構成要素として形成される配列ナノ空間を有する幾何多面体構造物質を中心に電気伝導・超伝導・熱伝導の研究を遂行した。特に多面体構造を組み合わせてできる固体は、配列ナノ空間を有し、その配列ナノ空間の中にアルカリ金属元素(Na,KRb,Cs)、アルカリ土類元素(Sr,Ba)磁性元素Euなど種々の元素を導入できる。その結果として、伝導ならびに磁性に興味深い電子物性を発現できる事が知られている。H23年度ならびに繰り越し年度であるH24では、幾何多面体物質であるクラスレート物質に対して、キャリヤ濃度を広い範囲で変化させた物質群の高品質の単結晶を合成して、物性と構造との関係を様々な物質群に対して調べた。 特に、伝導電子と非調和フォノンを分離する事によりフォノンの非調和性が電子格子相互作用に及ぼす影響を詳細に検討した。また、フォノンの非調和性を詳細に変調させるために、d元素を物質構造に組み込んだ物質の単結晶を合成して、詳細な物質構造を基にした物性研究を進めた。その結果、配列幾何空間に閉じ込められた元素の位置関係とフォノンの非調和性ならびに電子格子相互作用の大きさに深い関係があり、非調和性が増加する事により電子格子相互作用の強度が2倍程度増強できる事を実験的に明らかにする事ができた。
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