(1)MgB4:電子回折で単結晶性を確認した領域からの価電子励起スペクトル測定から約0.5eVにプラズモン励起が観測され、低密度キャリアーの存在が示唆された。ボロンK殻励起スペクトルからは、伝導帯のエネルギー位置がボロン同素体に比べ約1.8eVも低いことが明らかになった。ボロンK発光スペクトル測定からは、価電子帯の上端のエネルギーが、他のボロン同素体とほぼ同じエネルギー位置であることがわかった。伝導帯および価電子帯のスペクトルを比べた結果、エネルギーギャップの大きさを0.6eVと実験的に見積もることに成功した。 (2)C60ポリマー:本特定領域研究で合成された3次元C60ポリマーだけでなく、すでに合成が報告されている2次元C60ポリマーに関しても測定を行った。その結果、C60分子の重合度が進むにつれて、価電子帯上端に位置するπバンドのプロファイルに系統的な変化が生じていることが明らかになった。しかしながら、価電子バンドのエネルギー幅はモノマーC60と変わらずダイヤモンドよりも少し小さいままであった。これらは、3次元C60ポリマーは、sp3結合というよりも曲率を持ったsp2結合ネットワークの特徴を有していること示唆している。 (3)角度分解軟X線発光分光:単結晶領域の特定が容易であるという電子顕微鏡の特徴を生かし、単結晶領域からの角度分解軟X線発光分光のテストをグラファイトおよび六方晶BNで行ったところ、π電子帯とσ電子帯のエネルギーバンド部の分布を独立に抽出できることを示した。これにより、大きな単結晶が得られなくとも、価電子の異方性分布解析が可能であることを明らかにした。さらに、この手法をαボロンのB12クラスター間に存在する異方的3中心結合の計測に適応し、理論計算との比較検討をおこなった。
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