本研究の目的は、これまで築いてきたユビキタス元素であるBとAlの正20面体クラスター固体の統一的描像をさらに進めつつ物質探索を行うことである。具体的には、下記の3つの方向から研究を行っている。 1) 正20面体の対称性が高いことから電子状態の縮重度が高くなり、フェルミ・エネルギーでの状態密度が高くなる可能性があり、これは超伝導にとって有利な状況で、超伝導転移温度Tcの高い超伝導体を探索する。 2) 正20面体の対称性が周期性と共存できないことから、複雑構造固体となる。これは、ナノスケール(クラスターベース)の複合材料と考えられ、単純構造固体では共存できない物性を併せ持つ可能性がある。単純構造固体では共存しない低い熱伝導率κ、高い電気伝導率σ、大きなゼーベック係数Sを併せ持ち、大きな熱電性能指数(Z=S^2σ/κ)を持つ可能性が予想され、新しい熱電変換材料を開発する。 3) III族のクラスターは、固体中でも、孤立クラスターとしても、正20面体以外の構造を持ち得るので、これらの物質開発も行う。
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