研究概要 |
高圧ラマン散乱分光による半導体クラスレートの研究を行った。対象とした物質は、タイプI型ゲルマニウム・クラスレートI_8Sb_8Ge_<38>、タイプI型のスズ・クラスレートA_8Sn_<44>□_2(A=Rb, Cs)とRb_8Hg_4Sn_<42>、そしてチャンネル構造を示すBaAl_2Si_2であった。これらのクラスレート化合物においては、I, Rb, Cs原子がゲストとなり低波数域において「ラットリング」振動を示すと言われている。本研究の成果は、次のようにまとめられる。 1. タイプI型のクラスレート化合物I_8Sb_8Ge_<38>、A_8Sn_<44>□_2(A=Rb, Cs)とRb_8Hg_4Sn_<42>において、ゲストI, Rb, Cs原子のラットリング振動を、ラマン散乱の低波数域(30cm^<-1>-100cm^<-1>)で、世界で初めて観測することに成功した。 2. タイプI型Ge系クラスレート(I_8Sb_8Ge_<38>)における同形構造相転移の世界で初めての観測 Ba_8Si_<46>で代表されるタイプI型Siクラスレートで、これまで高圧力下で同じ構造のまま、大きな体積減少を伴う相転移が観測され、多くの興味が持たれている。しかし、同じGe系のBa_8Ge_<43>□3では、この同形構造相転移は観測されなかった : Si系で提案されている欠陥誘起の相転移機構、すなわち、このBa_8Ge_<43>□_3では、既に欠陥が存在することに起因する。欠陥のないタイプI型GeクラスレートI_8Sb_8Ge_<38>の高圧ラマン散乱と高圧XRD実験を行った。圧力約42 GPaでの同形構造相転移の世界で初めての観測に成功した。 3. 超高圧力下、50万気圧までのラマン散乱測定に成功し、各種の圧力誘起構造相転移やアモルファス化を見つけ、既知のシリコン・クラスレートの構造安定性との比較を行い、半導体クラスレートの総合理解を得た。
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