研究領域 | 配列ナノ空間を利用した新物質科学:ユビキタス元素戦略 |
研究課題/領域番号 |
19051008
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
久米 徹二 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30293541)
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研究分担者 |
佐々木 重雄 岐阜大学, 工学部, 教授 (30196159)
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キーワード | 半導体クラスレート / ラマン散乱 / ナノ結晶 / ラットリング / 高圧XRD |
研究概要 |
半導体クラスレートをはじめとする、配列ナノ空間物質の物性を大きく左右するラットリング振動を高圧力下においてラマン分光により直接観測し、ケージサイズを変数としたラットリング振動の特性を調べた。試料として、今回初めてVIII型Siクラスレート(Sr_8(AlGa)_<16>Si_<30>)を用いた。100 cm^<-1>以下の低振動数域に観測されるSrのラットリング振動を圧力20 GPaまで観測することに成功した。同じ試料で得られた高圧XRD実験の結果も合わせ、振動数のケージサイズ依存性を明らかにした。その傾向は、これまで明らかにしてきたI型の半導体クラスレートと同様であった。このことからラットリング振動は、ケージの形状や構成元素にはあまり影響されず、振動が許される空間の大きさと自身の原子サイズで決まることが明らかになった。また、高圧XRD実験から、VIII型クラスレートもI型と同様に、体積の減少を伴う同形構造相転移および非晶質化を生じることが初めて明らかになった。ラットリング振動の振る舞いをさらに詳細に探るための低温・高圧・低波数ラマン測定システムの構築を完了した。液体Heクライオスタット、ダイヤモンド・アンビル・セルが従来の低波数ラマン測定システムに組み込まれ、10 cm^<-1>程度までの低波数領域が10 K以下において数GPa以上という高圧力下において測定可能になった。測定システムを、半導体クラスレートEu_8Ga_<16>Ge_<30>のラマンスペクトルにより評価し、実際に低温・高圧・低波数ラマン測定が可能であることを確認し、その成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで行うことにできなかったVIII型クラスレートの高圧ラマン、XRD実験を行いその成果を発表することができた。これにより、高圧極限状態における配列ナノ空間物質のラットリング振動および構造安定性の議論に大いに役立つと期待できる。
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