研究概要 |
多孔質結晶のゼオライトのナノメートルの細孔にアルカリ金属を吸蔵させると,アルカリ金属クラスターを配列させることが可能となり,クラスター間の相互作用も加わって,構成される元素にはない全く新しい性質や機能をもった物質系ができる。特にこの系はSi,Al,O,Na,Kなどの典型的なユビキタス元素から構成されており,クラスターの量子準位や電子相関を利用して新しい物質系が実現する。その中で,本研究では,ゼオライトFAU(ダイヤモンド構造),LTA(単純立方構造),SOD(体心立方構造)にアルカリ金属を種々の濃度で吸蔵した多数の試料を系統的に作製し,その磁性,光学測定,NMR,強磁場磁化過程,電気伝導度,電子スピン共鳴などの測定とその解析を行った。そのうち,実験法としては,より低温で磁気測定を行うことが可能になり,これまで見えていなかった磁性が明らかになってきた。また,粉末の雷気伝導度の測定法を新たに開発し,温度を変えて測定する技術が進歩し,測定結果が得られつつある。強磁場グループとの連携により,パルス超強磁場による磁化測定を行い,磁気モーメントおよびその間の相互作用について新しい性質が見えてきた。また,試料作成法としては,圧入法により,アルカリ金属を常圧吸蔵を超えた濃度までドーピングを行うことができるようになり,種々の新しい磁性相が見えてきた。これらの結果から,非磁性元素のアルカリ金属のs電子系が,配列ナノ空間で示す新たな性質が明らかになりつつある。
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