研究概要 |
多孔質結晶のゼオライトのナノ細孔にアルカリ金属を様々な濃度で吸蔵させると, 殻模型で近似されるアルカリ金属クラスターを3次元的に配列させることができる。クラスター間の相互作用も加わって, 構成される元素にはない全く新しい性質や機能をもった物質系ができる。その中で, 本年度は, FAU構造(ダイヤモンド構造)を有するゼオライトLSXにおいて, Na-K合金クラスターを作成し, その磁性がNaイオン数に依存して大きく変化する事を見いだした。これはβケージとズーパーケージのポテンシャルのバランスがNaイオン数に依存して変化し, それが磁性を大きく変えているものと考えられる。またこの系の電気伝導度を測定し, 高濃度に吸蔵すると金属状態へ変化することが見いだされたが, 極低温で再び電気抵抗率が何桁も上昇する現象を見いだした。これは純粋なカリウムクラスターでは観測されなかった現象であり, 磁性の違いとも関係して, 現在この系の電子状態の解明を進めている。次に, LTA(単純立方構造)をもつゼオライトAにおいて, カリウムクラスターの中性子回折の実験を行い, 磁気散乱の検出を試みたが, スピン密度が低いため, 通常の実験条件では検出限界以下であることがわかった。またSOD(体心立方構造)で配列するソダライトのNa, K, Rbを含むクラスターのμSR測定を行ったところミュオン回転信号が明確に観測されその結果と磁気測定の結果からクラスターの電子状態の系統的な変化を見いだすことができた。またソダライト骨格に含まれる^<27>AlのNMRを観測し, 降温に伴う線幅の増大が観測された。特に、反強磁性転移温度を境にしてNMR線幅の急激な変化が見られ, 磁気転移を顕著に反映することがわかった。
|