研究概要 |
1. La-Si二元系について, 12-15GPaにおける高圧状態図を実験的に作成した。常圧ではLaSi_2が最もSi含有量の多い化合物であるが超高圧を用いることにより, LaSi_5およびLaSi_<10>の新規化合物が得られた。それぞれ, 980℃と750℃に分解溶融点を有する化合物であるが, 単結晶の合成に成功し, X線構造解析を行った。LaSi_5はSiからなるポリアセン構造を含み, 急冷相(α相)と徐冷相(β相)が存在する。β相ではSiがdisorderしている。α-LaSi_5はTc=10.5Kで, LaSi_<10>はTc=6.7Kで超伝導体となることを見いだした。LaSi_<10>はLaを内包するSi_<18>多面体が連結する新規クラスレート構造を有する。La@Si_<18>ケージ構造は先に高圧合成して得られたBaSi_6に含まれるBa@Si_<18>多面体と興味有る類似性があることを指摘した。高温高圧合成は新規クラスレートの探索において, 極めて有力な手段である。 2. I型クラスレートA_8Ga_<16>Ge_<30>(A=Ba, Sr, Eu)の内包原子とカゴのGa原子の電子状態を放射光X線光電子分光によって調べた。14面体中のゲストの電子状態はA=BaとA=Srでは異なり, しかもカゴのGaの配列も異なることが判明した。この結果は, ケージのGa-Geの配列がゲスト原子に強く依存することを意味する。 3. I型Ba_8Ga_<16>Sn_<30>の熱伝導率はn型p型に拘わらず, 同型のもののなかで最も低く, ガラスに似た温度依存性を示す。この原因を比熱測定とラマン散乱によって調べた。Baゲストの非調和振動の特性エネルギーとカゴの振動エネルギーは他のI型よりも著しく低いことが判った。ゲストの非中心サイト間の運動が音響フォノンを効果的に散乱し, 低温での熱伝導率を抑制すると結論した。
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