計画研究
ナノスケールの構造制御によって、通常では得られない新奇な物性の発現が期待できる。本研究の目的は、ナノメートルからサブナノメートルサイズの配列空間を有する物質系において、この空間を利用した新規物質系を作製して、新奇物性を探索すること、またその発現機構を明らかにすることである。本年度は主に以下の研究を行った。(1)半導体-金属型分離された高純度単層カーボンナノチューブ(SWCNT)および新規ナノ炭素固体であるゼオライト鋳型炭素(ZTC)のNMR、比熱、帯磁率などによる基礎物性の研究、(2)分子性ナノ細孔物質、ZTC、SWCNTなどのナノ空洞内の水の研究、(3)ZTCのナノ空洞内の希ガスの構造および相転移挙動の研究、(4)SWCNTの1次元空洞内の酸素分子の構造の研究。特に、以下に示す成果を得た。(1)SWCNTおよびZTCの基礎物性の研究:直径1.35nmの高純度半導体型・金属型SWCNTおよび直径0.8nm近傍の磁性不純物が極めて少ない高純度SWCNT試料の作製に成功した。この試料を用いて、帯磁率の精密測定を行い、軌道帯磁率のSWCNT直径依存性に関する予備的結果を得た。(2)細孔内の水のNMRによる研究:ZTC内部への水の吸着とそのダイナミクスを調べた。ZTCは140W%もの水を吸着できるが、この水が200K以下まで液体的であることが分かった。NMRの緩和時間の測定から水分子のダイナミクスが議論され、fragile液体であることが示唆された。(3)ZTC内部に高密度に希ガスが吸着可能であることがX線回折実験から明らかになり、この希ガスは低温でアモルファス的な構造をとることが計算機実験から示唆された。(4)直径0.8nm近傍の高純度SWCNTを作製し、酸素の吸着実験を行った。X線回折実験より、SWCNTの1次元空洞内に高濃度に酸素が吸着されることが確認できた。このような酸素分子は量子磁性(ハルデン磁性)を示すものと予測され、低磁場およびパルス強磁場を用いた帯磁率測定が行われた(共同研究)。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
J.Chem.Phys.
巻: 134 ページ: 244501-14
10.1063/1.3593064
Adv.Mater.
巻: 23 ページ: 2811-2814
10.1002/adma.201100549