研究領域 | 配列ナノ空間を利用した新物質科学:ユビキタス元素戦略 |
研究課題/領域番号 |
19051014
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
高野 義彦 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導線材ユニット, グループリーダー (10354341)
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研究分担者 |
長尾 雅則 山梨大学, クリスタル科学研究センター, 助教 (10512478)
川江 健 金沢大学, 電子情報学系, 講師 (30401897)
水口 佳一 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (50609865)
山口 尚秀 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導線材ユニット, 主任研究員 (70399385)
津田 俊輔 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導物性ユニット, 研究員 (80422442)
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キーワード | ダイヤモンド / カーボンナノチューブ / グラファイト / ホウ素 / ドーピング / 超伝導 / インターカレーション / 鉄系超伝導 |
研究概要 |
ホウ素ドープダイヤモンドに加え、新たに、高濃度ホウ素ドープ・カーボンナノチューブ、さらに配列ナノ空間を有する鉄化合物などの関連物質を合成し、制御された環境で金属-絶縁体転移を励起することを試みる。特に、配列ナノ空間を有するこれらの物質は、それに起因する独特のフォノンや電価を有しており、このことより、絶縁体から金属へ、金属から超伝導へと劇的な物性の変化が期待される。これらの物性の制御と、詳細な電子状態の評価が本研究の目的である。 炭素化合物の代表ともいえるダイヤモンドについては、マイクロ波プラズマCVD法を用いてホウ素ドープダイヤモンド薄膜を作製した。成膜技術の向上により、ホウ素濃度を精密にコントロールすることに成功し、低温で超伝導が出現するダイヤモンドと絶縁体に転移するダイヤモンドを作り分けることが可能となった。そこで、超伝導ダイヤモンド薄膜、絶縁体ダイヤモンド超薄膜、再び超伝導ダイヤモンド薄膜を積層させ、超伝導・絶縁体・超伝導接合を作製した。これは、オールダイヤモンド積層型ジョセフソン接合の世界で初めての成功である。シャピロステップの観測にも成功し、ジョセフソン接合であることを検証した。 ホウ素ドープカーボンナノチューブを熱CVD法により合成した。ホウ素源としてホウ酸を用いて、安全に簡便にホウ素ドープカーボンナノチューブを合成することが可能となった。得られたホウ素ドープカーボンナノチューブ1本に電子線リソグラフィーにより4端子を微細加工し電気抵抗の温度依存性を評価したところ、仕込みのホウ素濃度が高くなるほど電気抵抗率が減少する傾向が見られ、ホウ素のドープによるキャリア導入が確認された。しかし、金属的伝導を示すには至らなかったため、カーボンナノチューブにピストンシリンダーセルを用いて圧力を加え、さらなる電気抵抗率の低減と金属化を試みた。その結果、圧力の増加にともない一次元的伝導から三次元的伝導に変化しつつ電気抵抗率が急激に低下し、金属に非常に近い状態が得られることが分かった。 配列ナノ空間を有する鉄カルコゲナイド化合物を合成し、アニール効果や液体中の反応を評価した。その結果、層間の空間に存在する過剰な鉄が超伝導発現の鍵を握っており、鉄を取り除く、もしくは鉄の近くの空間に陰イオンを導入すると超伝導が発現することが分かってきた。鉄カルコゲナイドは、超伝導発現の鍵を理解する上で大変重要な材料であることが分かった。
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