研究分担者 |
上田 寛 東京大学, 物性研究所, 教授 (20127054)
益田 隆嗣 横浜市立大学, 国際総合科学研究科, 准教授 (90313014)
加倉井 和久 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 副部門長・上級研究主席 (00204339)
川島 直輝 東京大学, 物性研究所, 准教授 (30242093)
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研究概要 |
昨年度に引き続き, フラストレート量子スピン系の新奇性質と次元性の関係を, 二次元系を中心に調べた. ゼロ次元系では,多孔性物質に酸素分子がダイマーを組んで入る物質の励起状態を初めてみることに成功した(JPSJ注目論文賞). 一次元系では, 1次元磁性体SrNi2V2O8がSakai-Takahashi相図におけるスピン液体と反強磁性の相境界に位置することを見出した. 低温還元反応によって, スピン梯子酸化物Sr3Fe2O5の合成に成功し, 一次元と二次元を結びつけるS=2n本脚梯子の合成を予言した(日経新聞など). 二次元系では, SrCu2(BO3)2において1/8磁化プラトーの磁気構造が, これまでの理論的予想とは異なり, 1/8磁化を超えても保たれることを見出した. また, 構造フラストレーションを内包するAサイト秩序型ペロフスカイトMn酸化物(NdBaSm)2Mn2O6において室温巨大磁気抵抗の実現に成功した, 三角格子物質(NiGa2S4)のモデルについてモンテカルロシミュレーションを行い, 空間回転対称性の破れを伴う1次転移があることを見出した. 次元低下現象を示すBaCuSi2O6などの面間相互作用にフラストレーションのある系のモデル計算を行い, 有限温度転移では離散対称性も同時に破れているにも関わらず, 通常の3次元XYユニバーサリティクラスの臨界現象を示すことが分かった. イオン交換を用いて合成される一連の層状ペロブスカイト(CuBr)A2B3010の合成に成功し, 1/3磁化プラトーの発現条件に関する知見を得た. 三次元系では, 3次元フラストレート系クロムスピネル物質CdCr204の全磁化過程の観測に成功し, 相互作用の関係を明らかにした. また, 3次元フラストレート系パイロクロア型フッ化物をあらたに開発した. その他, 構造にジグザグ鎖、三角格子を内包する酸化物、カルコゲン化物の開発を行った.
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