計画研究
平成22年度も1、2、3次元の量子スピンフラストレート系の物質開拓を中心に研究を行った。主な研究成果は以下の5つである。(1)一次元フラストレート系に関しては、強磁性反強磁性一次元フラストレート鎖LiCuVO4の強磁場極低温下での中性子回折を行った結果、純粋な一次元鎖で予想されているボンドネマティック/SDW状態ではなく、ネマティック状態を色濃く残したままスピンが長距離秩序化した新しい状態が実現しているおり、これが弱い鎖間相互作用に起因することを明らかとした。(2)二次元フラストレート系に関しては、(CuCl)LaNb207の純良な単結晶の育成に成功した。粉末および単結晶試料を用いた(放射光)X線回折、中性子回折実験によって、従来、2次元正方格子フラストレート系(J1-J2モデル)と考えられてきた同物質が、強磁性シャストリーサザーランドモデルに対応することを明らかにした。非弾性中性子散乱実験によって、磁気励起もよく説明できることを示した。さらに、関連物質では初めてのS=1系に対応する(NiCl)Sr2Ta3010の合成に成功し、部分無秩序相の存在の可能性を示した。(3)3次元フラストレート系に関しては、クロムスピネルAC_2O_4において、400T域までの精密な磁化測定に世界に先駆けて成功し、磁化プラトーを含む特異な磁気相図を明らかにした。また、構造に幾何学的フラストレーションを有する擬ホランダイト物質ACr_5X_8の磁性を明らかにするとともにフラストレート効果を観測した。(4)理論的な主な成果は、テンソルネットワーク法を用いて,三角格子ハイゼンベルクモデルやJ1-J2モデルの基底状態を明らかにしたこと、また、鉄系超伝導母物質の磁性についてモデルをたて、その2段階転移の機構を解明したことである。
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