研究領域 | フラストレーションが創る新しい物性 |
研究課題/領域番号 |
19052005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前川 覚 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (40135489)
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研究分担者 |
太田 仁 神戸大学, フォトサイエンス研究センター, 教授 (70194173)
菊池 彦光 福井大学, 工学部, 教授 (50234191)
小山田 明 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教 (60211835)
松平 和之 九州工業大学, 工学部, 助教 (40312342)
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キーワード | フラストレーション / 磁性体 / 新奇秩序 / 三角格子 / かごめ格子 / パイロクロア / 反強磁性 / 核磁気共鳴 |
研究概要 |
代表者前川と分担者小山田は、スピン1/2有機三角格子反強磁性体EtMe_3Sb[Pd(dmit)_2]_2において、交換相互作用の1万分の1の低温まで磁気秩序が起こらず、量子スピン液体状態が実現していることを発見したが、さらに20mKの低温までの^<13>C-NMR実験により、1Kにおいて対称性の破れないしはトポロジカルな相転移が起こっていることを見いだした。これは金属におけるフェルミ液体の超伝導転移やヘリウム液体における超流動転移に対応する量子液体の不安定性による新しい相転移、新しい量子凝縮相状態である可能性がある。また1K以下の低温相の磁気励起はノードギャップを持つ可能性を指摘した。 またパイロクロア格子におけるフラストレーション現象を明らかにするためにs=1のNi_2(OH)_3ClのNMR実験を行い、スペクトル線幅の増大からこれまで理論的には予言されてはいるものの未だ発見されていないネマティック秩序が起こっている可能性を示した。スピン1/2パイロクロア格子反強磁性体Cu_2OCl_2についてもNMR実験を行い、磁気秩序状態は、all-in all-out構造であること、秩序状態でもフラストレーション特有の低エネルギー揺らぎが残っていることを明らかにした。パイロクロア格子におけるall-in all-out構造は初めての観測である。 一方、分担者太田はs=1/2パイロクロア格子Cu_2(OH)_3Clのスピンダイナミクスと基底状態を強磁場ESRで調べ、またs=1/2ハニカム格子反強磁性体InCu_<2/3>V_<1/3>O_3の強磁場ESRで,線幅の特異な増大現象を発見した。分担者菊池は種々のフラストレート磁性体の探索と基礎測定を行い、ハニカム格子磁性体InCu_<2/3>V_<1/3>O_3の低温域においても大きなスピン揺らぎが残っていることを見つけ、また三本鎖スピン格子磁性体Cu_3MoO_4(OH)_4では磁気秩序が生じないことを見いだした。分担者松平はパイロクロア格子スピンアイス物質Dy_2Ti_2O_7の緩和率を測定し、緩和機構に熱活性型温度域と量子効果が支配的な温度域が存在することを見いだした。
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