研究領域 | フラストレーションが創る新しい物性 |
研究課題/領域番号 |
19052008
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
香取 浩子 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 教授 (10211707)
|
研究分担者 |
高木 英典 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40187935)
求 幸年 東京大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (40323274)
藤山 茂樹 独立行政法人理化学研究所, 高木磁性研究室, 専任研究員 (00342634)
|
キーワード | 磁性 / 相転移 / フラストレーション / 格子自由度 / 格子自由度 / スピン自由度 / 電荷自由度 |
研究概要 |
本研究は幾何学的フラストレーションを内在する物質において自由度の複雑な絡み合いの結果生じる新機能・物性、特にスピン・軌道複合液体状態やスピン・電荷複合液体状態、それに付随する機能を発掘することを目指している。本年度は以下の点を明らかにした。 1.強いスピン軌道相互作用と特異な格子トポロジーの協奏によって生じる新奇量子相の開拓を目指して研究を推進した。特に、スピン軌道相互作用の強いイリジウム酸化物は、モットギャップの小ささ(ソフトさ)と大きな磁気結合が共存するユニークな系であるため、この系を中心に新奇磁性の探索を行った。(1)層状ペロブスカイト酸化物Sr_2IrO_4の磁化を詳細に解析し、この物質が強いスピン軌道相互作用を持ちながらも、等方的な二次元ハイゼンベルグ反強磁性体であることを明らかにした。(2)新しいイリジウム酸化物NaYIrO_4粉末試料の合成に成功した。これは層状構造をもち、二次元面内が三角格子を、面直方向にジグザグ鎖を有する。磁化測定は10Kという低い温度で異常を示し、スピンの凍結を示唆するものの、比熱測定に顕著な異常が現れない。このため、面内反強磁性と面直強磁性結合の拮抗に起源を持つスピングラス的な物質であると考えられる。(3)ソフト化学法を用いた物質探索を行い、イリジウム酸化物の新規フラストレーション物質の開発に成功した。 2.フラストレート伝導系における新奇秩序とそれに伴う新しい伝導現象の理論研究を行い、以下の成果を得た。(1)周期的アンダーソンモデルにおける種々の部分無秩序の発現とその安定化機構を解明した。(2)強磁性近藤格子モデルにおけるスカラーカイラル秩序の発現機構を解明した。(3)スピンアイス近藤格子モデルにおける磁気相図の解明およびスピンアイス液体状態における非近藤型抵抗極小現象を発見した。また、チェッカーボード格子上の横磁場イジングモデルの数値計算を行い、水素結合系四角酸結晶に見られる非自明な局所相関を伴った液体的な状態の発現機構を明らかにした。
|