研究分担者 |
溝口 照康 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70422334)
柴田 直哉 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (10376501)
阿部 英司 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (70354222)
着本 享 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 講師 (50346087)
佐藤 幸生 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (80581991)
|
研究概要 |
平成23年度はこれまでに確立してきた界面・表面・転位等の格子欠陥領域におけるナノ計測手法を活用することによる更なる高精度でのナノ機能元素評価ならびに界面・転位制御技術を用いた低次元物性の開拓などを目的として研究を行ってきた.具体的な項目を以下に述べる. 1.界面構造の超高精度解析 球面収差補正装置を導入した走査透過型電子顕微鏡(STEM)ならびに電子エネルギー損失分光(EELS)による原子レベルでの2次元マッピングにより酸化マグネシウム粒界における複合微量不純物元素の局在化ならびに規則構造の形成を明らかにした(Nature,2011)他,近年開発した環状明視野STEM法による軽元素位置も含む局所原子配列の直接観察(JACS,2011)なども成果を挙げた.また,高速計算システムの導入により,これまでより大きな規模の第一原理計算を行えるようになり,より一般的な粒界の計算に道筋をつけた(PRB,2011).また,本プロジェクトを通して行ってきた酸化亜鉛粒界におけるナノ機能元素の局在挙動の一連の解析から,粒界の回転角-局在挙動の相関性ならびに粒界構造転位を見いだした. 2.界面・転位構造制御による新奇低次元物性開拓 これまでに本プロジェクトにおいて明らかにしてきた界面における原子配列ならびにナノ機能元素の局在挙動の理解は低次元物性の開拓へと発展できると考えている.典型的な電気絶縁体のアルミナ(Al2O3)粒界にナノ機能元素を導入・局在させた結果,粒界に沿った2次元的な電子状態の形成が起こることが分かった.電気伝導測定の結果から粒界に沿った導電率の向上が認められ,局在伝導の発現が示唆されている.今後,局所配線形成や高温で用いる半導体,パワーデバイスなどへの応用ができる可能件があると期待する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
走査透過型電子顕微鏡法(STEM)と理論計算を有効に活用することにより,界面・表面等の格子欠陥領域に局在する「ナノ機能元素」の位置を原子レベルで直接観察することに成功し,また,直接観察に基づいて構築されたモデルを用いた第一原理計算から電子レベルでの役割も明らかにすることができた.また,粒界・転位等を積極的に活用した新奇物性の開拓にも進展があった.
|
今後の研究の推進方策 |
本特定領域自体は今年度をもって終了となるが,5年間のプロジェクトを通して得られた多くの知見は今後の研究においても積極的に活用する.粒界・界面・転位・表面といった格子欠陥領域における構造の原子・電子レベルでの理解,ならびにそこから得られた材料物性発現のメカニズムの理解は更なる材料設計へとつなげるごとができると期待する.今後,転位や界面等を制御することによる新奇な低次元物性の開拓,低次元物性を活用したデバイスへの応用などに展開していきたい.
|