研究概要 |
本研究の目的は,様々な材料物性発現に関与している格子欠陥などの格子不整にトラップされたドーパント元素の分析を通じて,その機能発現メカニズムを理解することによって新しい材料開発をする指針を見出すことである。本研究グループの分担は,透過電子顕微鏡(TEM)をベースとするナノ領域電子分光法による機能元素分析である。本年度の成果として以下が挙げられる:(1)電子定在波法による原子サイト選択的電子状態測定法の開発:結晶試料に入射する電子の方向を連続的に変化させ回折条件を変えて記録した電子エネルギー損失分光(EELS)スペクトルから,異なる化学環境にある元素のスペクトル成分を分離することに成功した。これらは第一原理計算による各サイトの理論スペクトルと良い一致を示した。(2)多変量解析と画像回復法を組み合わせた位置敏感ナノ分解能電子状態測定とその可視化:EELSにおいて二次元検出器(CCD)上に位置敏感スペクトルを記録し,PIXON法を用いて信号抽出をすることにより,1%未満の微量元素の位置敏感スペクトルを取得する技術を開発した。(3)TEM用波長分散型X線分光器(TEM-WDX)の改良:マルチキャピラリX線レンズ(MCX)を使ったコンパクトなWDXシステムにおいて,異なる波長に対応する分光結晶を4種類装着し,かつソーラースリットを挿入することによって,およそ150-2500eVの範囲の特性X線放出スペクトルをおよそ1eVのエネルギー分解能で取得することができるようになった。
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