研究概要 |
本研究の目的は,走査/透過電子顕微鏡(S/TEM)に付随した各種分光法(EELS, EDX, WDX, CL)測定を集約し,ナノメートル領域からのこれらの機能元素の分光データを総合的に解析して「物性診断」ともいうべき手法を開発・応用することである.本年度の成果は以下の通りである: (1)電子チャネリングを応用したサイト選択的電子状態測定において,動力学的電子回折理論と第一原理計算を組み合わせた,実験データと比較できるスペクトル理論予測法を確立した.これと前年度開発したPC制御ビームロッキングEELS自動測定によって,スピネルフェライトの結晶場の違いに起因するEELSスペクトルの変化をサイト選択的に測定することに成功した. (2)STEM-EELSデータを統計処理することで化学結合分布マップを作成する手法をリチウム電池正極に適用し,正極活物質表面に生成するリチウムフッ化物の同定,サイクル劣化による劣化相の生成,成長の定量評価に成功した. (3)電子チャネリング条件におけるTEM-EDXデータ測定によってサイト選択的元素分析の各種法を開発した.これらを希土類添加蛍光セラミックスCa_2SnO_4およびM型フェライトにそれぞれ適用し,添加元素の占有サイト及びそれぞれの占有率を求めた. (4)可視光応答する光触媒である窒素添加チタニアにおいて、可視光応答のための最適窒素添加量及び有効触媒厚さを評価した.また所望の量に触媒活性な窒素を効果的にチタニアに注入するためには,格子欠陥を同時に導入することが重要であることを示した.
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