研究概要 |
ナノスコピックプラズマプロセス制御の各段階初年度計画に基づき,以下の成果が得られた. 1.独自に開発した拡散プラズマCVD法による,空の高品質単独・孤立垂直配向単層カーボンナノチューブ(SWNT)の成長機構を解明した。すなわち,損傷効果を含む成長時間発展拡張方程式の導出に成功し,これを用いて実験結果を解析した結果,プラズマからの成長基板への入射イオンエネルギーが炭素間の結合エネルギーに関連する10eV程度の低エネルギー領域で極端にSWNTのエッチングが進行すること,及びそれが原子状水素に起因することが明らかになった.なお,二層カーボンナノチューブ(DWNT)については継続して検討中である. 2.アルカリ-フラーレン(A-F),アルカリ-ハロゲン(A-H)に加えてカルシウムプラズマ生成法を確立し,単極性基板バイアス法により各種電荷活用原子内包ナノチューブを創製し,FET特性の測定により電子物性を解明した.その結果,Cs@SWNT,Cs@DWNT,Ca@SWNT,C_<59>N@SWNTはn型半導体であり,I@SWNT,C_<60>@SWNT,C_<60>@DWNT,C_<70>@SWNTは強固なp型半導体,C_<84>@SWNTは両極性半導体であることが判明した.これらのいずれにおいても大気安定性が検証された.更に,金属性DWNTを用いたC_<60>@DWNTは,室温動作の高性能負性微分抵抗特性を示すことが実証された. 3.A-F及びA-Hプラズマ中の極性反転基板バイアス法により電子ドナー・アクセプタ接合内包の(Cs/C_<60>)@SWNT,(Cs/I)@SWNT,(Cs/I)@DWNTを創製し,それらのFET特性を測定した結果,伝達特性と出力特性においてそれぞれ得意なハンプと整流性が観測され,大気安定なナノpn接合ダイオード特性が実証された. 4.蒸気拡散法と電子サイクロトロン共鳴プラズマ法融合によるSWNTへのスピン活用強磁性金属Feイオン注入方式の基盤をほぼ確立し,Fe@SWNT創製実験を開始した結果,有望な成果が得られつつある.
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