研究概要 |
ナノスコピックプラズマプロセズ制御の各段階年次計画に基づき, 以下の成果が得られた. 1. 独自に開発した拡散プラズマCVD法で成長させた空の高品質単独・孤立垂直配向単層カーボンナノチューブ(SWNT)の発光現象に関して, 成長した基板上から明確な蛍光特性を観測することに成功した. また, このフォトルミネッセンスにおいて, SWNTの形状が完全孤立状態から小規模束状構造に変化するに伴い励起子エネルギー移送機構に基づいて発光強度が増大することを初めて見出した. 2. アルカリーフラーレン(Cs-C_<60>), アルカリーハロゲン(Cs-I)プラズマを用いて創製した, 電子ドナー・アクセプタ接合内包SWNT((Cs/C_<60>)@SWNT, (Cs/I)@SWNT)のダイオード物理の次年度に跨る詳細解明に向けて, 先ずは, ドーパントの組み合わせによりpn接合由来のハンプ電流の出現確率が変化することを明らかとした. さらに, エネルギーバンド構造計算結果をもとにこの現象を説明するバンドモデルを構築し, 次年度の詳細測定に有用な知見を得た. 3. フラーレン内包SWNT(C_<60>@SWNT)における光誘起電子輸送現象に関して, 空のSWNTに比べC_<60>を内包することでp型伝導の伝達(電流一電圧)特性の閾値電圧が大きくシフトすることを実験的に初めて見出した. また, この現象をC_<60>とSWNT間での電荷移動モデルにより説明した. 4. 蒸気拡散法と電子サイクロトロン共鳴プラズマ法融合によるSWNTへのスピン活用強磁性金属Feイオン注入方式の基盤を確立し, さらに他の磁性金属であるCoに関しても同様の手法を用いてイオン注入が可能であることを実証した. また, Fe@SWNTデバイスについては, n型半導体特性を示すと共に, 室温では超常磁性で低温下では強磁性特性を発現することを初めて見出した. しかし, 元になる空のSWNTには成長時に用いられた触媒金属Feが残留しており, 上記の得られた結果が純粋に内包由来と断言するためには, 次年度以降には非磁性金属触媒使用のSWNT成長法を確立すべく拡散プラズマCVD実験を集中的に行う必要があることが分った.
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