研究概要 |
ナノスコピックプラズマプロセス制御の最終年度計画に基づき,以下の成果が得られた. 1.単層カーボンナノチューブ(SWNT)のカイラリティ精密制御への挑戦として,プラズマCVDによるSWNT合成時に効果的に水素イオンを導入することにより,各カイラリティに対する核成長過程でのインキュベーションタイムの差を増大させることに成功した。この結果は,水素イオンがSWNTカイラリティ精密制御に極めて重要な働きを持つことを示していると共に,特定のカイラリティSWNTのみの大量合成が可能であることを意味している. 2.SWNTの電気特性と磁気特性の関係については,先ず非磁性触媒からプラズマCVD合成したSWNTを用いたFETの伝達特性は高いオンオフ比を示すことが判明した.これはプラズマCVDにより半導体的SWNTが優先的に成長した可能性を示唆している.次にその磁気特性を超伝導量子干渉素子により測定した結果,空のSWNT薄膜の磁化率が正となることを見出した,その理由に関しては,SWNT欠陥中の不対電子由来の局所的効果であると考えている.この成果はH20年度のFe内包(@)SWNTの磁性測定結果に重要な知見を与えている. 3.内包SWNTの電気特性と光学特性の関係については,p型のC_<60>@SWNT薄膜とn型Siから成るpn接合による光電変換素子を作製し光起電力効果を調べた結果,光エネルギーがSWNTのバンドギャップの2倍以上の場合変換効率が最大となることが観測され,1個の光子で2個以上の電子-正孔対が形成される多重励起子生成の可能性を示唆する結果が得られた.また,内包SWNT一本を用いて作製されたpn接合内臓SWNT光電変換素子は,赤外領域の光入射に対して高効率(~10%)で光起電力を発生することを実証した. 4.内包SWNTの超伝導現象の追究については,H21年度にプラズマイオン照射法によって創製に成功したCa@SWNTを用いて,その電気伝導特性評価をFET配位のもとで行った.コンダクタンスの温度変化に関するアレニウスプロットの結果から,Caを内包することで超伝導への転移温度が空のSWNTに比べ数K程度上昇する傾向があることが判明した.本結果から,今後Caの内包条件の最適化により,更なる転移温度の高温化,すなわち高温超伝導実現への可能性が期待できると言える.
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