研究概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)電子エミッタの基礎特性の解明と高性能化に関して,以下の成果を得た。 1.CNT表面の金属被覆およびガス分子吸着の電子放出特性への効果 多層CNTの表面にアルミニウム(Al)および金(Au)を1から10nmの膜厚で堆積したところ,電界放出の閾値電圧の低下は見られなかったものの,Alでは膜厚に拘らず電子放出の安定性が向上すること,Auにおいても膜厚2.5nm以下では電子放出の安定が明らかになった。また,Al堆積CNTの電界放出顕微鏡(FEM)観察において,Al原子クラスターが原子分解能で観察されるという興味深い結果が得られた。また,炭化水素ガスの一つとしてメタンの吸着効果を調べたところ,放出電流の増大が見られたほか,吸着したメタン分子の形状を示唆するFEM像が得られた。今回のCNT表面の原子クラスターおよび分子の観察は,原子分解能FEMの可能性を示すものであり,原子レベルでの表面ダイナミクスの直接観察へのFEM応用の道を開くものとして今後の発展が期待される。s 2.CNTポイントエミッタの作製と電子源基礎特性の解明 透過電子顕微鏡内でのCNTのナノ溶接により電気的機械的コンタクトを向上させた単一CNTエミッタを作製し,その電界放出特性を明らかにした。また,電気泳動法により金属針先端に接着した単独CNT束を電子源とする電子顕微鏡用照射系を試作し,その電子光学特性を計測した結果,従来の単結晶タングステン冷陰極に比べて,CNT電子源は高い輝度と電子線収束性を有することが明らかになった。 3.CNTポイントエミッタ作製のためのマニピュレーションシステムの設計 走査型電子顕微鏡内でCNTを高い信頼性で電子源に固定するためのマニピュレーションシステムを設計した。来年度以降,このシステムを用いてCNTポイントエミッタの作製を行う。
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