研究概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)の電子源および電子デバイスへの応用を目指し,以下の成果を得た。 1.走査電子顕微鏡に搭載したCNT電子源の性能評価 多層CNT(MWCNT)を多結晶タングステン(W)針の先端に電子線誘起堆積法により固定し,これを電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)に搭載し,SEM像の取得に成功した。同じ条件下で市販品のW単結晶(310面)を電子源に使用して取得した像と比較することにより,性能評価を行った。その結果,CNT電子源の電流変動率は1%以下であり,W電界エミッタの約3%に比べて,放出電流安定性において優れていることが分かった。分解能では,どちらのエミッタも40nm程度であったが,SEM像のS/N比においては,CNT電子源の方が劣っていた。これはビーム電流が1から数nAと少ないためである。今後,短いMWCNTの固定し,また高電流に耐える固定法の確立によりビーム電流を増加させられれば,CNT電子源は高価なW単結晶エミッタに代わる電子源と成り得る。 2.CNT-金属電極コンタクトの構造と電導特性の解明 CNTとニッケル(Ni)電極との接触部の構造と接触抵抗との間の関係を,先端の閉じた(閉端)CNTおよび先端の開いた(開端)CNTの2種類のMWCNTに対して,その場透過電子顕微鏡法により調べた。Ni電極と接触したCNTに電流密度で7.6×10^8A/cm^2の電流を流すと,接触部のNiがジュール加熱により局所的に融解し,CNT先端がNi内部に埋込まれ,接触抵抗の減少が観察された。Niとの接触部の単位面積当りのコンダクタンスは,閉端CNTの場合では0.40±0.12μS/nm^2,開端CNTの場合では1.5±0.4μS/nm^2であった。接触抵抗の減少開管CNTのほうが大きくなった。これは開管CNTの場合、最外層だけでなく内層も直接Ni電極に接触していることに起因する。
|