研究概要 |
20年度では、初年度で合成、評価された新規の金属内包フラーレンあるいはDNAや直鎖ポリイン分子を内包したカーボンナノチューブの分光学的特性および電子輸送特性測定を行い、この新規ナノ炭素物質の新規性、特異性を明らかにすることを進めた。金属内包フラーレンをチューブ内にドープしたナノチューブは、通常の空のナノチューブと比較して、その構造や物性が際だって変化することが期待される。特に、Ce, Gd, Sm, Fe, Ti, Tb, Lu金属フラーレンはフラーレンケージ上に過剰の電子スピンをもつ。この電子スピンはナノチューブへ電子移動することが予想される。このチューブへの電子移動により、チューブのフェルミレベル近傍の局所状態密度が変化し、その結果、これらの金属内包フラーレンがドープされたカーボンナノチューブは金属性や(場合によっては)超伝導性をもつことが期待される。一方、DNA内包ピーポットの電子物性と電子輸送特性はさらに興味深い。DNAとカーボンナノチューブは強く相互作用することが知られており、カーボンナノチューブにDNAを内包させれば、ピーポット全体の電子物性・輸送特性は劇的に変化することが予想される。平成20年度では、特に、Eu原子ナノワイヤーを内包した単層および2層カーボンナノチューブの合成に成功した。金属の内包率も90%以上と極めて高かった。Euナノワイヤー内包のカーボンナノチューブの磁気特性を観測したところ、50K以下で(バルクEuとは異なり)極めて特徴的な磁性を示すことが分かった。
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