研究概要 |
本研究の目的は、修飾カーボンナノチューブ(CNT)のナノ電子物性、吸着物性、ナノ電気伝導特性などの計測をおこない、修飾CNTの表面・界面物性を多角的に評価することである。本年度は、単層CNT (SWNT)の状態密度計測のための新手法の開発、および金属酸化膜修飾SWNTの吸着特性の評価をおこなった。また、トンネル電流誘起発光分析用超高真空・極低温走査トンネル顕微鏡(STM)システムを立ち上げ、基礎データを取得した。 環境効果を排除してSWNT本来の状態密度を計測する手法として、金属探針先端にSWNTを成長させ、金属基板を試料として探針側のSWNTの走査トンネル分光(STS)スペクトルを計測する手法を提案し、van Hove特異性に由来する明瞭な状態密度ピークを捉えることに成功した。同手法を用いて、様々なSWNTのvan Hove特異性を探査し、カイラリティを同定した。その結果、カイラリティ(9,5)や(9,7)の半導体SWNT、(18,6)の金属SWNT、(17,7)の高指数カイラルSWNTなど、第一原理計算による厳密な解析が可能な高精度のデータを得た。 次に、SWNTに金属酸化膜(SiO_x, AlO_x)を修飾し、SWNT薄膜ガスセンサーを用いて、その吸着特性を調べた。その結果、金属酸化膜修飾により、ガスセンサーの安定性が著しく向上し、同時に、センサーの感度が向上することを見出した。 さらに、単一SWNTの発光特性計測に向けて、トンネル電流誘起発光分析用超高真空・極低温STMシステムを立ち上げた。先端にSWNTを成長させた金属探針をSTM探針として用い、トンネル状態において、探針直下のトンネル電流により励起されたSWNTが失活する際に放出される微弱発光についてフォトン計測及びスペクトル解析をおこない、SWNTからの発光を捉えることに成功した。
|