研究概要 |
本研究ではナノチューブ(CNT)のナノメカニクスの動的過程を解明するという観点から,1)機械的エネルギーの散逸機構の解明,2)熱伝導および格子振動の伝搬の解析,3) CNTの塑性変形や接合の動的過程の解明,4)CNTのトポロジカルな欠陥の動的過程と電気伝導の関係を明らかにすることを目的とし,本年度は以下の研究を実施した. 1 カーボンナノチューブの機械的エネルギー散逸機構 片持ち梁構造のナノチューブが共振している際の振動スペクトルを熱や気体の擾乱を除去した環境下で計測し機械的なエネルギーの散逸過程を解析ためにSEMに装着可能な低温ステージおよび顕微分光用チャンパを準備すると共に予備実験を開始した. 2.格子振動の伝搬 ナノチューブの通電過熱下における定常状態の温度解析をSEMマニピュレーターにより測定可能とした。近赤外域の測定では光量が不足したので近赤外顕微分光系をH20年度に導入することとした。 3.分子動力学解析 エネルギー散逸について古典的なポテンシャルを用いた分子動力学計算を行い,CNTの層間相互作用について検討し,損失には層間ファンデアワールス相互作用が関連していることがわかった。 4.塑性変形,接合のダイナミクス:座屈弾性曲げ変形を通電加熱することにより座屈を解消し塑性曲げ変形が得られることを明らかにした。また,その動的過程の観察に成功し,移動した炭素原子量および反応の活性化エネルギーを見積もった。さらに,ナノチューブ内部に閉じこめたフラーレンを接合したナノカプセルがナノチューブ軸に沿って輸送される現象を見いだした。 5.ナノチューブの欠陥と電気伝導:通電加熱による座屈弾性曲げ変形(6員環で構成されsp^3的性質をもつ結合をもつ)から塑性曲げ変形(6員環に5員環,7員環が付加)に変化する過程の電流変化を追跡し,明らかに導電性が高くなることが明らかになった。
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