計画研究
1)低温におけるナノチューブの機械的エネルギーの散逸機構の検討.エネルギー散逸と層間相互作用の関係を調べるため、2層ナノチューブ等の多層ナノチューブについての検討を進めた。また、比較的太い多層ナノチューブに働く光輻射力について理論・実験の両面から検討し、光照射により片持ちはりナノチューブの共振周波数が変調可能なことを見出した。2)熱伝導蓄よび格子振動の伝搬≧機械的振動の散逸との関連の検討ナノチューブのジュール加熱時における温度の過渡応答について検討しナノチューブと基板との接触部め伝導について検討し比熱等の基本パラメータの検討を行い、一本のナノチューブの熱時定数がナノ秒オーダーであることを実験的に明らかにした。さらに、光誘起熱励振法による片持ちはりナノチューブの周波数応答から室温付近におけるナノチューブと基板との界面熱抵抗を求める方法を考案した。3)塑性変形・接合のダイナミクスの検討ナノチューブの塑性曲げ変形が直線に回復するときに発生する力の大きさの起源について調べた。曲げを与えるトポロジカル欠陥の局在性が強く関与していることを実験および計算機シミュレーションにより明らかにした。また、ナノチューブのキャップ先端部分に電子線照射により欠損を与えることにより、そこにより細いナノチューブの接合が可能なことを見いだした。4)ナノチューブの欠陥と電気伝導の検討塑性曲げ変形から直線状に回復するときに、欠陥修復により力を発生するだけでなく、抵抗が数十%の割合で小さくなることを見いだした。また、多層ナノチューブの内層を抜き出して、比較的太い肉厚の小さいナノチューブを室温で放置することにより扁平状態を得た。これに流す電流量を変化させることにより、可逆的な円筒-扁平遷移を得、遷移によって電気抵抗が変化し、扁平状態の方が伝導性が良いことを見いだした。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画ではメカニクスや熱伝導のダイナミクスを明らかにする事を目的としていたが、これらについては概ね当初の計画通り順調に進展した。さらに、研究計画に加えてナノチューブのメカニクスの制御方法を発見(熱、電界、光による)した。さらに、振動計測、熱伝計測、構造制御などに新しい研究領域を切り開いた。
本研究課題で見出されたカーボンナノチューブのメカニクスの知見により、高性能(小型、超高速、省エネルギー)電子デバイス、特に、ナノ電気機械システム(NEMS)への展開を行っていく。さらに、本研究課題で発見したナノメカニクスの制御方法をさらに展開し、ナノマシン、超精密計測へ展開する。これにより、様々な環境下での単一ナノ粒子の質量、比熱などの物性測定が可能となり、機能性ナノ粒子開発の効率化、省エネルギー化に寄与する。
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機械学会論文集A編
巻: (掲載確定)
Jpn.J.Appl.Phys.
Journal of Non-Crystalline Solids
巻: (in press)
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巻: 100 ページ: 083110-1-083110-4
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10.1016/j.cplett.2011.01.023