研究領域 | カーボンナノチューブナノエレクトロニクス |
研究課題/領域番号 |
19054015
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
本間 芳和 東京理科大学, 理学部, 教授 (30385512)
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研究分担者 |
市田 正夫 甲南大学, 理工学部, 准教授 (30260590)
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キーワード | カーボンナノチューブ / 光物性 / ナノデバイス / 非線形光学応答 / フォトルミネッセンス / 緩和ダイナミクス / 水吸着 |
研究概要 |
単層カーボンナノチューブ(SWNT)の特異な光学特性をデバイスに応用するため、その光学応答の解析を通じて、デバイス応用への基本指針を得ることを目標に研究を進め、以下の成果を得た。 ・構造(カイラリティ)を同定した1本のSWNTの光励起発光測定と分子動力学シミュレーションから、SWNT表面と水との相互作用を詳細に調べ、水蒸気圧がある臨界値以上になると、SWNT表面に水分子1層の厚みの安定な水和層が形成されることを解明した。この水和層は100kJ/molという通常の水の2倍以上の大きな潜熱を持ち、CNT表面の分子間力ポテンシャルの谷に捉えられた水分子同士が、互いに結合することによって形成される2次元的な水の相であることを解明した。(本間、千足) ・溶液中でDNAを吸着させたSWNTを基板上で分散・乾燥させることで、基板表面に一様な発光性SWNT薄膜を形成することができた。SWNTは、そのままでは基板上では発光しないので、この方法はデバイスへの応用上重要である。(本間、千足) ・最近、半導体的SWNTと金属的SWNTを精度よく分離することが可能になった。そこで、高純度半導体・金属分離SWNT試料を用いて、光学応答を支配する励起子の緩和ダイナミクスを、ポンプ・プローブ分光法によって調べた。SWNTバンドル試料と孤立SWNT試料を比較することにより、チューブ内およびチューブ間の緩和レートを見積もることが出来た。SWNTバンドル中で励起が半導体SWNTから隣の金属SNWTに移動するレートは半導体SWNT同士のレートよりやや高かった。これは、SWNT間の状態密度の違いによるものと考えられる。一方、金属SWNTではバンドル試料と孤立試料ではその時間応答に殆ど差はなく、緩和がほとんどチューブ内で決まっていることがわかった。また、金属SWNT試料では、光励起による可視光領域の吸収帯の変化が、キャリアドーピングのそれと類似しており、光励起をフォトキャリアドーピングとみなすことができごとがわかった。(市田)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画のうち、SWNTと水分子との相互作用ならびにSWMとDNAとの相互作用の解明、および金属・半導体高純度分離試料を用いた励起子緩和ダイナミクス解明については、大きな成果を得た。一方、SWNTの構造制御については、特筆すべき進展は得なれなかった。
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