カーボンナノチューブの量子デバイス応用を目指して、以下の2つの研究を行った。 第1に、単電子デバイスの集積化を目指し、これまでに開発した配向成長と基板への転写技術を利用して2つの並んだカーボンナノチューブに対して単電子トランジスタをそれぞれ作製し、2つの量子ドット間を金属で容量的に結合させた簡単な集積でバイスを作製した。このデバイスでは、液体ヘリウム温度において一つの量子ドットの電子数の変化を容量的に結合したもう一つの単電子トランジスタで検出できることを実証した。すなわち、一方のドットの電子数が変化するたびに、もう一方のドット(エレクトロメータ)の電流に変化が見られる。 第2は、カーボンナノチューブ量子ドットの量子光デバイス応用を目指し、その光物性の測定を行ったことである。1本のカーボンナノチューブの両端に分子を修飾した量子ドットの発光特性を、走査トンネル顕微鏡から電子を注入することにより発光させると、分子で修飾したナノチューブの方が何もないナノチューブよりも発光線幅が狭いこことを見いだした。このことは、分子の修飾により閉じこめの効果が強められたことを示している。さらに、トンネル分光により量子ドットは放物線ポテンシャルで閉じこめられた電子系となっていることが明らかになった。このことは、液体ヘリウム温度におけるフォトルミネッセンスの励起光強度依存性にも反映されており、発光に離散的な閉じこめ準位からの発光が観測された。
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