計画研究
カーボンナノチューブ(CNT)はその内部空間に様々な分子を内包できる事から、これまでにもこの空間内部に金属や金属塩あるいは有機化合物の一次元結晶が作られてきた。これらCNTと内部の分子によるハイブリッド物質の物性は次の二点の理由から大変興味深い。即ち、一つはCNT内部空間に導入された物質がCNT全体の電子状態に変化を与える点であり、もう一つはCNT内部空間においてこれらの内包された物質が構造を空間的に制限されることによりバルクの状態とは異なった物性を示す点である。従って、これらのCNTと導入された分子の相互作用による物性変化の機構を解明することは新規ナノ電子材料を開発するにあたって極めて重要である。本年度ではCNT内部の制限された空間が内包物質の物性と構造に与える影響に着目し、これを明らかにすることを目指した。その結果、以下のCNTと内包物質の相互作用による物性および構造の変化を明らかとし、また、その機構に関して考察した。(1) 錫や鉛は結晶成長をなす際に比較的大きな臨界核半径を持つ成長核を形成する事が必要である。この事に着目し、錫及び鉛の溶湯をこれらの金属の臨界核半径以下の径を持つCNT内部空間に導入することで結晶成長を妨げ、室温においてアモルファス相として内部空間に安定に保持できる事を明らかとした(Small誌掲載)。(2) 臭化銀は紫外線や電子線の照射により銀へと還元されるが、CNT内部空間に導入することで光および電子線に対する反応性を著しく低下させる事がこれまでにも知られている。しかしながら、その機構の詳細は未だ詳らかではなかった。このCNT内部の臭化銀の特異な安定性がいかにして呈されるかを明らかとする為、紫外レーザー光並びに電子線照射下におけるCNT内部の臭化銀と臭化銀粉末の反応における挙動の比較を行った。その結果、CNT内部の臭化銀は臭素の外部への拡散をCNTによって妨げられるとによって反応を抑制される事を明らかとした(Adv. Mater.誌掲載)。
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