研究領域 | カーボンナノチューブナノエレクトロニクス |
研究課題/領域番号 |
19054017
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
末永 和知 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 研究チーム長 (00357253)
|
研究分担者 |
佐藤 雄太 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 研究員 (90392620)
岡崎 俊也 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 研究チーム長 (90314054)
劉 崢 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 主任研究員 (80333904)
|
キーワード | 解析・評価 / 可視化 / 超精密計測 / 電子デバイス・機器 / 放射線、X線、粒子線 |
研究概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)はその内部空間に様々な分子を内包できる事から、これまでにもこの空間内部に金属や金属塩あるいは有機化合物の一次元結晶が作られてきた。これらCNTと内部の分子によるハイブリッド物質の物性は次の二点の理由から大変興味深い。一つはCNT内部空間に導入された物質がCNT全体の電子状態に変化を与える点であり、もう一つはCNT内部空間においてこれらの内包された物質が構造を空間的に制限されることによりバルクの状態とは異なった物性を示す点である。従って、これらのCNTと導入された分子の相互作用による物性変化の機構を解明することは新規ナノ電子材料を開発するにあたって極めて重要である。H23年度はCNT内部の制限された空間が内包物質の物性と構造に与える影響に着目し、これを明らかにすることを目指した。その結果我々は以下のCNTと内包物質の相互作用による物性および構造の変化を明らかとし、またその機構に関して考察した。 (1)カーボンナノチューブに内包される超分子システムにおいては、2つかそれ以上の分子が、非共有結合性の弱い分子間相互作用によって、自己集合的に組織化する。カーボンナノチューブはそのような低次元分子性結晶合成に対して、理想的なナノπ空間を提供する。そこで、カーボンナノチューブをテンプレートとして用いることで、π共役芳香族分子であるコロネンからなる1次元ナノ構造を構築することに成功した。これはナノチューブ中にフラーレン以外で1次元分子結晶を作成した初めての例である。コロネンはナノチューブ中でカラム状に自己集合し、3次元結晶のそれとは異なる分子配列をとっていることがわかった(Angew.Chem.誌掲載)。 (2)端(エッジ)構造と原子欠陥は、ナノリボンなどの低次元材料の物理的性質や化学的性質に大きく影響を与えるため、原子スケールでの詳細な研究が必要である。とくにカーボンナノチューブ内でのナノ構造体の物理的性質を予測するために、今回我々は、走査型透過電子顕微鏡法を用いて、環状暗視野像と電子エネルギー損失分光法による、単層二硫化タングステンナノリボンの単一原子を識別し、空格子点や端原子などの動いている原子欠陥を明確に識別し、その可視化に成功した。その結果、ナノリボンにおけるすべり変形において空格子点の移動とタングステン原子の再配列が関与していることを示した。塑性変形時の単原子欠陥の観察に成功したのは、今回が初めてである(Nature Communications誌掲載)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CNTおよびCNT内包物質の構造解析実験は順調に進んだ。とくにナノチューブに内包される各種物質の構造解析や物性測定には大きな進展があった。またこれらの実験の途中に、偶然にもナノ結晶をなす氷の作製にも成功し、その構造解析も成功した(PRL誌掲載)。
|