計画研究
プラズマ化したトリチウムは、プラズマ対向壁との相互作用によって炉壁に付着するか、反射、再放出あるいは化学スパッタリングによる炭化トリチウムの放出を繰り返しながら輸送され、炉内広範囲に蓄積される。トリチウムの炉内蓄積速度を正確に予測するには、トリチウムプラズマ・壁相互作用とプラズマ、特に、境界層(SOL/ダイバータ)プラズマの輸送を統一して記述する理論と、それに基づく総合的シミュレーションコードの開発が必要である。本年度、境界層プラズマ輸送とプラズマ・壁相互作用コード開発者の連携研究を立ち上げ、各要素コードのモデルの構築・精密化、必要なデータベース作成を行う一方、境界層プラズマ不純物輸送IMPGYOコードとプラズマ・壁相互作用EDDYコードの複合化を実施し、トカマク等の実形状・実磁場配位で自己無撞着な評価が可能となった。次年度、さらにコードの複合化を推進し、主プラズマ輸送統合コードとの結合も視野に、更なるコードの統合を推進する。炭化トリチウムの発生要因となるグラファイトの化学スパッタリングや炭化トリチウムの炉壁での反射、再付着率を分子動力学シミュレーションで評価するとともに、それをEDDYコードヘデータ入力し、プラズマ対向壁タイルの隙間等、プラズマに直接晒されない部分への炭化トリチウムの再付着率を評価した。また、実機で観測されるダストによるトリチウム蓄積量を評価するたあ、次年度からのダスト輸送コードの開発に向けて、プラズマ中の電子のダストへの吸着断面積を評価した。材料中のトリチウム等水素同位体の輸送係数の分子動力学による計算にも着手し、次年度以降、実験を中心とするAO1班と連携して詳細モデルを構築する。水素同位体輸送には材料中の欠陥の影響が大きいため、第一原理計算によって水素原子を多重捕獲した単原子空孔の挙動も考察した。今後、実験、シミュレーション、さらに量子力学的計算も用いてそのメカニズムの解明にあたる。
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