研究領域 | 分子高次系機能解明のための分子科学―先端計測法の開拓による素過程的理解 |
研究課題/領域番号 |
19056003
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
粟津 邦男 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30324817)
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研究分担者 |
間 久直 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (70437375)
石井 克典 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (20512073)
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キーワード | 質量分析 / タンパク質 / MALDI / イオン化メカニズム / 試料溶媒 / 水 |
研究概要 |
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)による質量分析はタンパク質などの生体分子を含む様々な高分子の分析法として広く用いられている。しかし、MALDIは未だその反応機序の解明には至っておらず、反応機序の解明によってイオン化効率や再現性を向上させることができれば、MALDIのさらなる応用が期待できる。本研究では、これまでMALDIの理論モデルで無視されていた試料溶媒に注目し、溶媒の水がイオン化に強く影響していることを明らかにし、レーザー照射強度に応じてイオン化過程が異なっている可能性を示すことができた。 溶媒として水、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランを用いた。各溶媒を用いてペプチド(angiotensinII)を1pmol/μL、マトリックス(2,5-dihydroxybenzoic acid)を10mg/mLの濃度で溶解させ、両溶液を1:1(v/v)の割合で混合した。この試料溶液1μLをサンプルプレートに滴下し、乾燥させた後、紫外レーザーによりイオン化させて飛行時間型質量分析計で分析した。その結果、ペプチドイオンの信号は水を溶媒として用いた場合に最も強く検出された。しかしながら、溶媒にアセトニトリル、テトラヒドロフランを用いた場合、レーザー強度を上げるとペプチドイオン信号強度の上昇が見られた。これらの結果より、ペプチドは水溶液中でイオン化しており、レーザー強度がイオン化閾値に近い場合は乾燥させた試料中に残留した水溶媒がペプチドのイオン化に影響していること、およびレーザー強度が高い場合は気相での反応によるイオン化が起こっていることが示唆された。
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