研究概要 |
溶媒和クラスターは溶液化学の重要課題である揺らぎを分子レベルでアプローチする上で、格好の対象である。本研究では、この観点からレーザー分光法を用いたクラスターの構造と反応性の検討を進めている。 平成22年度は以下の研究を行った。 1.温度可変イオントラップ分光装置の改良 レーザー蒸発で生成した水和金属イオンの分光測定の精度を改良するため、測定データの補正法の開発と測定の自動化システムを構築した。この結果、以前に比べ光解離スペクトルのS/N比が大きく改善された。 2.温度可変イオントラップ分光を用いた水和金属イオンの微視的溶媒和の研究 水和金属イオンの微視的溶媒和,特に構造揺らぎの分子論的理解を目指し,我々が開発してきた温度可変イオントラップ装置を用いた水和金属イオンの光解離分光測定を行った。本研究では1価水和Caイオンを対象として,回転構造を伴う電子遷移の測定を行い温度の決定を行うとともに,温度と水和構造の検討を試みた。また酸化反応の温度依存性を調べるため、装置の改良を行った。 3.超原子価ラジカルのクラスター内での溶媒和構造と安定性 アンモニウムラジカル(NH_4)は、水素原子移動反応やポリアミドイオンの電子再結合過程の重要な反応中間体である。本研究では、実在系ポリアミドイオンの電子再結合過程と関連してアルキルアミン(NH_n(CH_3)_<4-n>)に注目し、アンモニアクラスター内での構造と安定性についてイオン化エネルギーの測定により調べた。また理論計算を行うことにより、クラスター内での余剰水素原子の局在位置と安定性を溶媒和構造との関連で検討した。
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