研究領域 | 分子高次系機能解明のための分子科学―先端計測法の開拓による素過程的理解 |
研究課題/領域番号 |
19056004
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
富宅 喜代一 神戸大学, 理学研究科, 名誉教授 (00111766)
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研究分担者 |
石川 春樹 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (80261551)
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キーワード | レーザー分光法 / クラスター / イオントラップ / 溶媒和 / 構造揺らぎ / 水和金属イオン / 超原子価ラジカル / イオン化エネルギー |
研究概要 |
溶媒和クラスターは溶液化学の重要課題である揺らぎを分子レベルでアプローチする上で、格好の対象である。本研究では、この観点から新しい分光法の開発を行うとともにクラスターの構造と反応性の検討を進めている。平成23年度は以下の研究を行った。 1.温度可変イオントラップ分光装置を用いた水和金属イオンの光解離分光 金属イオンの微視的水和過程の温度効果についての理解を深めることを目的として,温度制御した水和カルシウムイオンの光解離分光を行った。この結果、温度可変22極イオントラップ分光装置を用い30Kから室温にわたる広い温度領域で温度制御したCa^+(H_2O)のスペクトルの測定に成功した。回転スペクトルのシミュレーションからイオンの温度が制御されていることが検証した。 2.超原子価ラジカルのクラスター内での溶媒和構造と安定性:超原子価ラジカル(NH_4)のアルキル基効果を解明するために、アルキルアミン(NH(CH_3)_2)の水素原子移動のポテンシャル曲面を理論的に検討し、フェムト秒分光実験との比較を行った。この結果、メチル基置換による解離抑制機構を明らかした。 3.質量分析機能を備えた気体核磁気共鳴装置の開発: 分子・クラスターイオンの化学分析は近年、多分野で飛躍的に重要性を増し、質量分析法による研究が活発化しているが、この方法では構造情報の取得が困難なため、新しい計測法の開発が希求されている。この難題を克服するため新規に磁気共鳴加速原理に基づく気相イオンのNMR検出法の開発を進めている。今年度は、NMR測定の要となるNMRセルの改良とイオンの極低温冷却法の開発を行い、30mK(中心エネルギー<10meV)以下のイオン発生に成功した。また超高真空下でのNMRプローブの開発を行うとともに、RF磁場の動作性能を改良し気相イオンのNMRスペクトルの測定の検討を進めた。
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