計画研究
物質やエネルギーを外界からうけとり、他の形態に変換して戻すことによって、界面は多彩な機能を発揮する。生体膜や溶媒抽出(液体-液体界面)、触媒や光触媒(固体-気体界面)、電池や液晶(固体-液体界面)、ポリマー多層膜やEL素子(固体-固体界面)などのように人の役に立つ界面は媒質に埋没した状態で動作する。埋没界面に埋め込まれた分子系が発揮する高次機能を理解することが本研究の目標である。カンチレバーの共鳴振動数変化を検出することで探針にかかる力を計測する方式の原子間力顕微鏡(FM-AFM)は、さまざまな固体表面の単一原子分子を画像化する手法としてめざましく発展しつつある。JST先端計測機器開発事業と共同で開発した顕微鏡装置を用いて、KCl水溶液(濃度1mol l^<-1>)に浸積した二酸化チタン(110)単結晶面を観察した。室温で連続観察した凹凸像によると、高さ2nmの堆積物が二酸化チタン表面を一時間程度あいだに覆っていった。堆積物がKCl固体であるとすれば、溶解度(3.4mol l^<-1>)より低い濃度の溶液からの沈殿生成は予想外である。二酸化チタンと接する界面に溶質が濃縮されるという作業仮説にたち、溶質と濃度を変化させた系統的な実験にもとづいて、沈殿生成のメカニズムを明らかにする。顕微鏡探針にかかる力を探針-表面距離の関数として精密計測したところ、単調に減衰しつつ表面から2nm沖合までおよぶ背景力に加えて、0.4nmに極大をもつ成分が検出された。前者は二酸化チタン-水溶液界面の電気二重層が探針-水溶液界面の電気二重層と重なることに起因する斥力、後者は二酸化チタン表面近傍で構造化された溶媒分子が探針におよぼす斥力である。二重層斥力の到達距離が堆積物の厚さと一致したことは、電気二重層と堆積現象とのあいだに何らかの因果関係があることを示唆している。
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