本年度は、測定装置の改良と水溶液中の膜の測定を可能とする新しい試料作製方法に取り組んだ。具体的には、SFG分光装置のPC制御を進めることで、二重共鳴SFG電子励起スペクトルの測定効率を向上させた。また、水溶液中のシランカップリング膜の振動SFGスペクトルの測定を可能にする新規基板の開発を行った。 振動バンド毎の界面選択的な電子スペクトルである二重共鳴SFG電子励起スペクトの測定の効率化の為に、マルチプレックスSFG分光装置を可視プローブ波長の自動変更が可能なように拡張した。拡張した装置では、OPAの波長、前置および主分光器の設定波長、試料部でのプローブレーザーパワー、可視プローブ光学遅延ステージ、可動式試料ステージがPCにより制御される。拡張の結果、励起スペクトルの測定効率が格段に向上した。 シランカップリングによって作成した有機分子膜の水溶液中での振動SFG分光を可能とする新規の基板を開発にも取り組んだ。開発した基板は、厚さ500nmのシリカ層を赤外に対して透明なCaF_2基板に蒸着することで作製した。シリカ層が十分薄いため、基板は、紫外から赤外わたる広い領域に対して透明である。そのため、CaF_2基板側から紫外/可視と赤外プローブを入射することで、赤外プローブの水による吸収の妨害を受けることなく、シリカ層上のシランカップリング膜の振動SFGスペクトルを水中で測定することが可能になる。テスト試料としてフェニルトリエトキシシラン(C_6H_5Si(OC_2H_5)_3)をシランカップリングによって固定した膜を作製し、SFGスペクトルを測定した。1600cm^<-1>付近にあるベンゼン環の伸縮振動バンドを、プローブ光をCaF_2基板側から照射する方法と分子膜側から照射する方法の二種類の方法で観測することができた。
|