研究概要 |
・水溶液中のフルオレセイン単分子膜のDR-SFG電子励起スペクトルのpH依存性 フルオレセイン色素単分子膜の振動SFGスペクトルは,水溶液のpHに依存して大きく変化する.この原因を検討する為に,pH6.9と10.0の2つ溶液中について,429~639nmの範囲で9種類の可視プローブ光を用いて振動電子二重共鳴SFG電子励起スペクトルの測定を行った.励起スペクトルの振動モード依存性は小さく,また両pHにおいてその形が良く一致していた.得られた励起スペクトルをPage等の共鳴ラマン強度の理論を用いて解析したところ,ジアニオン種の電子スペクトルを変換することで,DR-SFG電子励起スペクトルを再現できた.これは,両pHの振動SFGスペクトルはどちらもジアニオン種のものであり,pHによる振動スペクトルの強度の変化はジアニオン-アニオン間の平衡の変化に,スペクトル形の変化はジアニオン種の配向や環境の変化を反映していると帰属した. ・シリカ基板上のマレイミド単分子膜の作製とチオール化合物の固定 チオール基を持つ様々な分子を固定するために、シリカ基板上にマレイミド単分子膜を作製した.マレイミド基はチオール基と容易に結合するため,作製した膜上にチオール化合物を固定できる.作製したマレイミド膜は,振動SFG分光によって固定されたマレイミド基の配向角を評価した.また,そのチオール化合物の固定能力の評価を,チオール基を有するアデニンとフルオレセイン色素を用いて行った,その結果,チオール化合物の固定量と配向性には,マレイミド基と基板をつなぐメチレン鎖の鎖長に依存し,鎖長11の膜の方が鎖長3の膜より,チオール化合物の固定量についても配向度についても優れていることが分かった.
|