研究概要 |
分子内に細孔を持つアルミノ珪酸塩であるゼオライト表面にMALDI法で用いられる有機マトリクス分子(2,4,6トリヒドロキシアセトフェノン)を吸着させ、これをあらたなマトリクスとしてペプチドの質量分析を行った。ゼオライト細孔空間での運動抑制によりマトリクス分子の解裂が抑制され、低分子量領域のスペクトルが単純化された。またゼオライトの超強酸の性質により、マトリクス分子へのプロトン移動が促進された。その結果、マトリクス分子のプロトン付加ピークは2倍、ペプチドの分子関連イオンピーク強度が最大で20倍増大させることに成功した。この実験事実を説明するためにIn-situの赤外分光法を用いてゼオライトとマトリクス分子の吸着構造を理解した。また、量子化学計算をもとにマトリクス分子の電子励起状態における溶媒(水分子)を仲立ちにしたプロトン移動メカニズム(solvent-assisted mechanism)を提案した。
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