研究概要 |
フェムト秒時間分解蛍光分光法を駆使して、7-アザインドール二量体の光二重プロトン移動反応の研究を行った。この反応では、プロトンが一つずつ段階的に移動するか、二つが連関して協奏的に移動するかについて激しい論争となっていたが、蛍光ダイナミクスの励起波長依存性に関する綿密な実験を行い、溶液中では2つのプロトンが約1ピコ秒で協奏的に移動することを明示した。代表的銅(I)錯体であるビス-2,9ジメチル-1,10フェナントロリン銅(I)錯体に関して、MLCT励起によって誘起される構造変化のダイナミクスを、フェムト秒時間分解吸収・発光分光によって研究し、光励起直後の構造がサブピコ秒の寿命を持つことを示した。これにより、銅(I)錯体の励起状態のポテンシャル曲面はヤーン・テラー理論の予想より複雑な形状を持っていることが明らかになった。 細胞イメージングの分野で注目される蛍光タンパク質(GFP)の電子構造を理解するために、3種類の典型的なGFP(オワンクラゲGFP,Sapphire,eGFP)について,マルチプレックス二光子吸収分光法により二光子吸収スペクトルを測定した。eGFPでは,二光子吸収ピーク波長の顕著なブルーシフトが観測された。さらに,eGFPの発色団の構造を持つ有機化合物(HBDI)についても同様の差異が観測されたことから、eGFPには隠れた電子励起状態が存在していると結論した。 核酸,タンパク質などの生体高分子に特有のダイナミクスは,低分子には見られない遅い時間スケールの運動で特徴づけられ,その機能発現において本質的に重要であると考えられる。ナノ秒からミリ秒の広範な時間領域で複雑分子のダイナミクスを追跡する手段として,フェムト秒レーザー、共焦点顕微鏡およびアバランシェフォトダイオード検出器を組み合わせた汎用蛍光相関計測システムを製作した。
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