既に稼働中のライン走査蛍光スペクトル顕微鏡を用いてトウモロコシの葉緑体に関する研究をさらに推進した。維管束鞘細胞と葉肉細胞の間で特徴的な蛍光スペクトルの差異を見出した。ただし、これは一見従来の知見と異なっており、いくつかの原因を考察した。従来法との大きな違いの原因の一つは、従来は葉緑体を単離して葉緑体の蛍光を極低温で調べているのに対し、本研究では常温で二光子励起を用いていることである。このような差異をもたらす原因をより詳細に明らかにするため、二光子励起レーザーの励起波長や強度による蛍光スペクトルの変化を詳細に調べ、近々国際誌に報告する。また、稼働中のライン走査顕微鏡において、励起レーザーの偏光を直線偏光や円偏光にして、いわゆる直線偏光二色性、円偏光二色性をクロロフィルの蛍光波長領域650-750nmにおいて取得することに成功した。これはチラコイド膜の内部構造を生理条件下で得る上において重要な手段になると期待される。また従来の回折限界を超えた空間分解能を達成する顕微鏡の独自開発を行っており、クロロフィル蛍光を見るために最適な構成を考慮して設計を進めている。その重要な要素である上下の等価光学系の倍率と焦点距離を一致させるベく対物レンズと結像レンズについて詳細に焦点距離を調べ、2000分の一以内で焦点距離と倍率が一致する干渉光学系をそろえる準備ができた。これを用いると従来よりも奥行き方向の空間分解能を4倍以上改善できる見込みである。
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