1)稼働中のラインスキャン蛍光スペクトル顕微鏡について、顕微吸収スペクトル測定との長時間にわたり個々の細胞への同時適用を実証し、顕微スペクトル測定の信頼性を確認することができた。特に、クロレラ細胞を15%のアセトンを含んだ培養液に浸して10時間以上にわたって葉緑体の変化を観察した。その結果無傷の葉緑体から、アセトンの影響を受けて部分的に光合成色素が非生理的な会合体となっていく様子を顕微蛍光スペクトルおよび顕微吸収スペクトルによって整合的に観察・解析することができた。 2)シアノバクテリアのうち、窒素欠乏条件で窒素固定を行うための細胞分化を示すものがある。この異型細胞が通常の光合成を行うための栄養細胞の中に出現する際のチラコイド膜の機能変化について、60時間以上にわたる長時間測定に成功した。通常の光合成細胞では見られず、また成熟した異型細胞にも見られない過渡的な特徴をいくつか捉えることができ、光合成色素タンパク質複合体がチラコイド膜上で集合して機能するメカニズムを解明する上で重要な知見となることが期待される。 3)これまで近赤外パルスレーザーを主な励起光源としてきたが、可視光線励起の場合との違いを明確にするために、488nmの可視レーザー光線を導入できる光学系を整備し、単一葉緑体や単一細胞から可視光線励起と近赤外光線励起の2種類の蛍光スペクトルと画像を得ることができるようになった。 4)超解像顕微鏡への準備状況: EMCCDカメラとインコヒーレント照明を用いた広域の蛍光強度を一度の露光で取得するデータ取得系について、上下の対物レンズからの蛍光像を一つのカメラ上で重ね合わせる手順を確立することができた。
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