1)超解像顕微鏡への準備状況:EMCCDカメラとインコヒーレント照明を用いた広域の蛍光強度を一度の露光で取得するデータ取得系について、上下の対物レンズからの蛍光像を一つのカメラ上で重ね合わせる手順を確立することができた。 2)稼働中のラインスキャン蛍光スペクトル顕微鏡について、近赤外連続発振レーザー光源を導入し、パルス励起(2光子励起が主)の場合と連続発振レーザー励起(1光子励起)の場合で大幅に異なる蛍光スペクトルを得て、植物葉緑体や藻類の葉緑体から光化学系I蛍光の特有成分を効率よく得ることができるようになった。それを用いて、緑藻の一種であるクロレラとC4植物の代表例であるトウモロコシの葉肉細胞と維管束鞘細胞の葉緑体について連続発振レーザーで特異的に強く見える蛍光成分を解析した。その結果、室温の測定であっても、従来77Kなどの低温で測定されてきた光化学系Iの蛍光極大波長位置に相関が高い蛍光成分を得ることができることを確認した。 3)近赤外励起のアンチストークス蛍光を常温で用いることで、やはりこれまで蛍光量子収率が低いことにより蛍光法で観察例の乏しかったクロロフィル会合体の蛍光スペクトルを感度高く得ることも可能となった。特に、クロレラ細胞を15%のアセトンを含んだ培養液に浸して10時間以上にわたって葉緑体の変化を観察した。その結果無傷の葉緑体から、アセトンの影響を受けて部分的に光合成色素が非生理的な会合体となっていく様子を顕微蛍光スペクトルおよび顕微吸収スペクトルによって整合的に観察・解析することができた。
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