研究領域 | 分子高次系機能解明のための分子科学―先端計測法の開拓による素過程的理解 |
研究課題/領域番号 |
19056013
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水谷 泰久 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60270469)
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研究分担者 |
石川 春人 大阪大学, 大学院・理学研究科, 講師 (40551338)
水野 操 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教 (10464257)
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キーワード | 共鳴ラマン分光法 / 時間分解分光法 / アロステリックタンパク質 |
研究概要 |
ヒトヘモグロビン(Hb)は、α鎖とβ鎖の2種類のサブユニットが2つずつ会合した四量体で、協同的な酸素親和性を示す。一方、これをα鎖とβ鎖に分離した単離鎖ではHb特有の協同性が見られない。このため、Hbと単離鎖での構造変化の違いを解明することは協同性発現機構を考える上で重要である。本研究では、リガンド脱離に伴う単離鎖のナノ秒からマイクロ秒領域における時間分解共鳴ラマンスペクトルを測定し、α鎖、β鎖およびHbとの比較をした。その結果、ヘモグロビン(四量体)と同様なスペクトル変化を示すものの、変化の速度は四量体のものとは異なっていること、また、α鎖とβ鎖の間にも違いがあることが明らかになった。これらの結果はサブユニット間相互作用がヘム周辺の構造変化に影響を与えていることを意味し、タンパク質内部の構造変化の連動性を理解するうえで興味深い。また、アカガイ由来の二量体ヘモグロビンについてもその構造ダイナミクスを調べ協同性発現機構について考察した。 光駆動イオンポンプでは、タンパク質中に含まれる発色団に光化学反応が起きることによって局所的な構造変化が誘起される。これがタンパク質の大域的な構造変化を起こし、イオンが輸送される。まず局所的な初期構造変化を明らかにするために、光駆動イオンポンプのひとつであるハロロドプシンについて、光化学反応に伴う構造ダイナミクスを調べた。光反応に伴ってトリプトファン残基のラマンバンドに変化が観測され、その時定数は約20ピコ秒と求められた。この値は、これまでに報告されたバクテリオロドプシン、センサリーロドプシンIIの値とよく似ている。また、スペクトル変化のイオン濃度依存性を調べ、イオン結合と初期構造変化との関係について考察した。上記のタンパク質以外にも、光受容タンパク質であるセンサリーロドプシン、イエロープロテインについても光反応に伴う構造ダイナミクスを調べ、光情報伝達の機構について考察した。
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