本研究課題では、出芽酵母の細胞壁チェックポイントの分子機構を明らかにすることを1つの目的にしている。細胞壁チェックポイントは、細胞壁合成の異常が起こった時に細胞周期を停止する機構のひとつであり、このチェックポイントが働くと細胞はG2期で停止し、M期に進行したことを示すスピンドルの形成が阻害される。我々は細胞表層の状態を監視し情報を核へ伝達するのに重要な経路であるMAPKカスケードに注目して解析を進め、その中でも特に浸透圧制御に関わるHOG経路のHoglp MAPKやPbs2p MAPKKが細胞壁チェックポイント機構に関与していること、上流のSHOI branch経路の因子についても細胞壁チェックポイント機構に関与していることを明らかにした。さらに、細胞壁チェックポイントが働いている時に、Hoglp MAPKが活性化しているかどうかを活性化型Hoglpのみを認識する抗体を用いて調べた。その結果、わずかではあるが、Hoglp MAPKが活性化していることが明らかになった。次に、Hoglp MAPKの活性化が実際にチェックポイントに必要かどうかを特殊なHoglpの変異株を作成して調べた。その結果、HOG経路のSHOI branchからHoglp MAPKまでの経路の活性化が細胞壁チェックポイントに必要であることが明らかになった。これらの結果は新しいHoglp MAPKの生理的意義を示すもので大変興味深い。
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