研究概要 |
未受精卵における細胞周期の停止、受精による細胞周期の開始、および受精しなかった場合の細胞死について、解析した。 1,ヒトデ成熟未受精卵はG1期に停止して受精を待つ。この停止は、Mos-MAPKの直下で、Rsk (p90 ribosomal S6kinase)を介した経路によるS期への移行抑制とともに、Rskを介さない経路によるM期への移行抑制によって、実現されていることを示した。これは、DNA複製チェックポイントが非機能的な系における細胞周期抑制システムを初めて明らかにするものであり、"dual lock" の概念を提唱している。 2.カエル成熟未受精卵は減数第2分裂中期に停止して受精を待つ。この停止の解除には、従来いわれていたCaMKIIだけでなく、カルシニュリン(CaN)も必要であることを明らかにした。これは、CaNの新規機能の発見でもある。 3.ヒトデ受精卵においては、G1期からS期の間に、雌雄両前核の接近と融合がおこる。こうした核融合は、細胞周期の進行を必要としないが、間期に起こるにもかかわらずM期に機能するサイクリンB-Cdklの低レベルの活性を必要とすることを見出した。これは核融合の制御について全く新たな視点を切り開くとともに、M期Cdkの間期における役割を初めて明らかにするものである。 4.ヒトデ成熟卵は受精しないと最終的にはアポトーシスをおこすが、その実行因子はカスパーゼ9様の遺伝子産物であり、これのカスパーゼ3様のペプチダーゼ活性(DEVDase)にもとづくことを明らかにした。さらにこの遺伝子産物のN末端領域に存在するCARDドメインのみを卵内に注入したときにも、内在性のDEVDase活性を上昇させることが明らかになり、現在この機構について解析している。
|