ヒトデ未受精卵での細胞周期の停止、受精による細胞周期の再開始、および受精しない場合の細胞死について解析した。 1.未受精卵における細胞周期の停止:ヒトデ成熟未受精卵のG1期停止はMos (MAPKKK)-MEK (MAPKK)-MAPK-Rsk経路に依存性しており、この停止中、Mosのタンパク量は見かけ上、一定である。ところが実際には、Mosはダイナミックに合成と、プロテアソーム依存性の分解を繰り返しており、それらが釣り合うことによって一定量を維持していると判明した。 2.受精による細胞周期停止の解除:ヒトデ成熟未受精卵は、受精するとMosタンパクが消失するとともにMAPKが不活性化してG1期停止を解除するため、これまで、Mosのタンパク消失はMAPK経路の不活性化に必須と考えていた。ところが実際はそうではなく、Mosのタンパク消失とは独立に、しかもMQSのキナーゼ活性が高いままでも、受精によってMEKのphosphataseが活性化し、それによってもMAPK経路が不活性化すると判明した。しかも、受精によるMosタンパクの消失は、プロテアソーム非依存性のタンパク分解と、タンパク合成停止の両方に依存すると判明した。受精によるMAPK経路の遮断は、複数のシステムにより保証されているといえる。 3.未受精卵の細胞死:受精しない場合、ヒトデ卵は減数分裂を完了すると約8時間後に同調的なアポトーシスを起こす。このアポトーシスの実行因子であるカスパーゼ-3/9は、卵抽出液中では高分子画分に存在すると判明し、アポトソーム様複合体の形成によって活性化することが強く示唆された。現在、アポトソームの構成因子であるApaf-1との結合を確認中である。
|