本計画研究では、細胞周期の制御分子の分解メカニズムとそれを介した細胞増殖調節機構を明らかにすることを目的とし、網羅的解析と特定分子に関する詳細な量的制御機構の解析を行っている。また、他の計画班員とも協力して、領域全体のテーマである細胞増殖制御の解明を目指している。網羅的解析に関し本年度は、細胞周期特異的分解をプロテオミクス的に解析するための条件設定を行ない、解析条件について基本的な部分を確立した(北川、渡邉)。特定分子に関しては、(1)細胞周期のブレーキであるCDK阻害タンパク質p27の新規分解メカニズムの解析を行ない、p27の新たなユビキチンリガーゼの同定に成功し、G1/S進行の新たな制御分子であることを証明した(北川)。(2)細胞周期のアクセルであるサイクリンDの正の発現調節因子としてARA54を同定した。さらにARA54がサイクリンDの転写レベルでの発現誘導を正に制御すること、サイクリンDが過剰発現しているヒトの癌でARA54が亢進していることを明らかにした(北川)。(3)ユビキチンリガーゼSCF-β-TrCPの新規基質の網羅的解析とその時空間的視覚化の条件検討を行なった(渡邉)。(4)すでにSCF-β-TrCPの基質であることを明らかにしているWeelに関し、その基質認識に重要であるリン酸化酵素CK2とPlk1がWeelにこれまで不明であった新しい作用機構をもつことを明らかにした(渡邉)。
|