本計画研究では、細胞増殖調節機構を明らかにすることを目的とし、細胞周期の制御分子のユビキチン依存的な量的制御機構の解析を行っている。本年度の研究では、(1)癌遺伝子産物c-Mybの量的制御に関する詳細な解析を行なった。我々は昨年度の研究で、マウスc-MybはGSK3によってT572がリン酸化され、SCF-Fbw7ユビキチンリガーゼによりユビキチン依存的に分解調節を受けることを見出した。さらに我々は本年度の研究で、ヒトのc-MybはSCF-Fbw7によりユビキチン依存的に分解制御されるが、GSK3に非依存的であること、GSK3はヒトc-Mybの転写を抑制的に制御している事を見出した。血液細胞の増殖分化のスイッチングを決定する因子であるc-Mybの発現量がヒトとマウスで異なるメカニズムで制御されている事はきわめて興味深い。(北川)(2)我々は細胞の増殖分化の決定に重要なTGFβ経路におけるユビキチンシステムの関与について研究しており、ヒト腎癌において、TGFβ受容体のSmurf2によるユビキチン依存的分解が亢進しており、それによるTGFβ受容体の発現量抑制が腎発癌に関与する事を示した。(北川)(3)昨年度構築した系により、β-TrCPのWDドメインに結合する基質の網羅的探索を開始した。またその基質認識を阻害する小分子の探索も開始した。(渡邉)(4)CK2リン酸化酵素のPlk1の基質認識における新しい役割を明らかにした。(渡邉)(5)Cdc25Bのβ-TrCP複合体によるリン酸化およびユビキチン化依存分解機構の詳細を明らかにした。(渡邉)
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