研究概要 |
1. これまでツメガエル成熟卵において、Mos/MAPK経路がErp1を安定化・活性化することで卵成熟停止(Meta-II停止)を引き起こすことを示した(Inoueら, 2009)。そこで本年度は、Erp1の活性制御機構を生化学的手法で詳細に解析し、これまで未同定のN末端の複数のセリン残基の脱リン酸化がErp1の活性化に重要であることを示した。さらにErp1のC末端領域が活性制御に必須であることを見い出した。 2. 最近、Cdc25BやサイクリンE2がMBT直後から発現されること見い出した。そこで、これらの正の(胚性)細胞周期因子の発現をモルフォリーノオリゴ法で阻害し、MBT以後の細胞周期や形態形成への影響を生化学・細胞生物学的に解析した。その結果、Cdc25BやサイクリンE2の発現がMBT後の体細胞型細胞周期への変遷に必要であることが判明した。また、これらの細胞周期制御因子が神経分化にも必須であることを示した。 3. 哺乳動物細胞でG2/M転移に重要とされる転写因子(FoxM1)のツメガエル胚発生における役割を分子生物学・発生学的手法で解析した。その結果、FoxM1がMBT後のCdc25B、サイクリンB1などG2/M制御因子の発現に必須であることを見出した。さらに、FoxM1がこれらの細胞周期制御因子の発現を介して神経分化のために重要な役割を果たすことを示した。これにより、細胞分裂と神経分化の関係が示された。 4. 分担研究 : 今年度は発生初期胚のcdk9遺伝子発現が、ゼブラフィッシュでは母性mRNAのpoly(A)鎖伸長により翻訳レベルで促進されることを明らかにした。対照的にアフリカツメガエルではMBT以降に接合子性mRNAが合成され、これが翻訳されることがわかった。
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